あたま日記

小学生の落書き帳みたいな気持ちです。

彫蛇のしんく!

20歳が終わったら刺青を入れると決めていた。
21歳になったら生まれ変わると思いたかった。
地続きの日々を終わらせたい気持ちがあった。

入れてからあっという間に
22歳の夏休みになって、
23歳の夏休みになって、
知らない場所に2回引っ越した。

親とは相変わらず不仲のままだが、23歳の冬、今、親のことをよく考えている。好きだったのになとか。考えても仕方ないことを考えてしまう。

〜間〜



刺青を入れる時、長く続いてる彫師の方の
所を探した。タトゥースタジオ等は避けた。
アートやファッションではなくて、
宗教に近いものを自分自身に感じていた為だった(別にアートとしてのタトゥーや刺青を悪いとか言ってる訳では無い)(宗教に近いものを課してるような、成してるような、私は私以外の信仰無くして生きていない感覚がある)。



彫師は、皺のある、ガタイの良い、男性だった。大学前のコンビニで予約の電話をいれた。

静かに、年齢や日時についての相談を、はい、はい、と答えられた。不必要な情報は聞かれなかったのでよかった。


カウンセリングを事前に行うことになって、
自作のデザインを見せながら、他の作品を見せてもらいながら、最終的にどうやって入れていくかを決めた。

部位は小さくデザインも細かく入れにくいものだったので、丁寧な作業が要されるようだった。そこでも彫師は静かに聞いてくれた。

「どうして入れたいの」等は聞かれなくて、それもよかった。


また後日、3日後くらいに施術する段取りになった。私は早い方が良いと伝えたのでそうなった。施術日は21歳の誕生日前日だった。それがまた私を暗い高揚に落とし込んだ。帰り道に咲いてた花より、ずっと生き生きしていたと思う。



〜間ッ〜


施術は思ったより長く、思ったより無痛で、思ったより血が出て、思ったより暖かった。

直前で「本当に良い?」と聞かれた。「はい」とだけ返した。

なんだか歯医者さんにいるみたいな音がすると思っていたけど、静かなもんだったな。



〜間〜


今思えば、前日のカウンセリングも、施術までの日数も、長く取ろうとしてくれていた気がする。

見た目からしても、年齢や大学生だと言うことからしても、この彫師の所に来るような人間ではなかったからだと思う(見せてもらった作品も女性が少なく、大柄な男性の背面や腕が多かったのはそういうことかな)。


だから余裕を持って、じっくり聞いて、じっくり待てる時間を作ってくれたのかな。


後悔は無い。
例え何日待っても考えは改めなかっただろうな。

21歳になったら私は20歳までの私とは変わっていて、そのシンボルとして、その形として、その表明と、自分自身への慈悲と、声掛けと、忙しなく健気な愛情として、入れていたと思う。


〜間〜


また1年が終わるので、ふと思い出した。
彫師の方は本当に素晴らしい方でした。
私はこれからも白蛇が伝う我が身を、ぼんやり生きてしまう自分を、大事に出来たらいいなって思う。